- 以前、手塚治虫先生作品で、AIをサポートツールとして使用し、新作を作られるというプロジェクトをされていたかと思います。
その辺りを踏まえ、AIとクリエイティブの関わり方についてご意見をいただけますでしょうか? -
- 手塚さん
-
基本的にあのプロジェクトは私主導のものではなく、「NEDO」という経済産業省主導の国立研究開発法人のプロジェクトなんですね。AIの開発者たちが、AIでのストーリー型コンテンツの開発と、画像生成AI技術を用いて、「漫画」というものにアプロ―チしてみたもので、そこにこちらから「手塚治虫のコンテンツを使ってそういうものができますか」と提案した形になります。
ですので、あくまで研究の実証実験の発表でした。
- 今、研究の一環と伺いましたが、最近では画像や音楽、文章においてAIが学習する過程において、著作権を侵害する可能性があるのではないかという議論がありますが、
その点についてどうお考えになりますでしょうか? -
- 手塚さん
- 初期はそういう事があったようですが、その後いろいろなプログラム・アプリが開発されて、今は大半のアプリは著作権をクリアしていると聞いています。
現在は日本よりも海外の方が、より厳密になってきていますので、今アプリで手に入るものに関しては、最初に注意書き、断り書きを提示し、了解を得ることでクリアになっているように思います。
- 既に亡くなった方の画風やお話が、まるでご本人が描かれたようにお話とか絵が生成されるとしたら、技術的にすごい一方、不安・嫌悪感を感じる人もいると
思われます。
そういった法律だけではない、人の気持ち・生理的な部分について当事者の方としてはどのようにお感じになりますでしょうか? -
- 手塚さん
-
長年映像をやってますので、その中で革命的な技術の進歩もありました。
例えば80年代ぐらいにコンピューターグラフィックス(CGI)が出てきましたね。
これに対して当時もすごい抵抗がありまして、危機感を感じている方からは、「俳優・スタントマンはいらなくなるんじゃないか」「監督がいらなくなるんじゃないか」みたいなことまで言われたんですけど、今のところいらなくなってはいませんね。
ただ、それによって表現の幅が広がって変化があったものもあります。今回のAIも僕は全く同じことを感じています。今映画などでことさら「CGを使いました」とは言いませんよね。
なぜ今みんながAIを気にしてるかというと、今「AI使ってます」って言っているからだと思うんです。今は発表しなきゃいけないので、僕らとしては「こういう新しい技術があるんです」というと、その言葉に対して反応がすごくデリケートに返ってきます。
でも言わなかったら何もわからないと思います。人間が描いたのか、プログラムがやったのかすらわからないです。
僕はそこについては問題ないと思っているんです。
映画とかエンターテインメントでは、結果が全てなので、受け止めた人が面白がってくれれば、それは人間だろうとプログラムだろうと関係ない、というのが僕の考え方です。
どんな手品だって種があるものです。ただジャーナリズムはそうはいかないので、今はこういう技術があるよということは、事前に伝えておいた方がいいと思います。
今はまだ過渡期です。数年の内はいろいろと議論になると思いますが、結局みんなが使い出せばあんまり関係なくなるのかなっていう感じです。
- 手塚さん的には、AIっていうのはあくまでツールの一つというお考えでしょうか?
-
- 手塚さん
- そう思います。
- アニメ制作において、年配のCGクリエイターさんからお話を聞くと、今のAIの出現というのは、CGが出始めた時と同じ事が起きていると仰る方も多いです。
クリエイターの苦労の上に作られたものが良いとされる反面、苦労することを美徳としてしてしまうことには疑問を感じるのですが、その辺りはいかがでしょうか? -
- 手塚さん
-
アニメーションで言えば、そもそも日本のアニメーションと海外のアニメーションの考え方が全然違っていて、ディズニーなどはアクションを見せることでお話を伝えるというところから始まっているんですね。
ところが日本は最初ディズニーの真似から始まりましたが、その後手塚治虫が何をやったかのかというと「漫画をアニメにする」という事をしたんです。手塚治虫から始まっている日本の漫画っていうのは”感情をどう伝えるか”っていうための絵なんですよ。アクションを伝えるという絵ではないんですね。それをアニメにして動かしているってことは、要は感情を動かしているってことなんです。もちろん同じようにアクションはありますが、アクションよりも感情が大事なのが日本のアニメーションで、そのための技術が培われてきた。手描きや3DCGという以前にそこが違うんですね。
逆に言うと手塚治虫は「鉄腕アトム」をテレビ番組として成立させるためにアクションは封じたんです。それをやるとお金も時間もかかるから、テレビアニメは生まれなかった。アクションじゃなくて感情・表情を見せられればいいと。そうすると表情とか感情の動きというのは、人間が描いた方が伝わりやすいんですよ。それでずっと日本のアニメというのは続いてきているんです。今は技術も上がったので、アクションも面白いアニメは日本でも作りますけど、アメリカでは未だにアクションを伝えることで何かを伝えようとしてるので、感情的な表情をあまり使わないんです。
だから3DCGの一つの特徴としてキャラクターにあまり表情がないんですよ。止めた絵を見るとわかるんですけど、みんなドングリ眼で、大した表情出てないんです。日本のアニメとは全然違うんですよね。でも彼らはアクションによってストーリーを伝え、そのストーリーの中に感情を盛り込んでいくということなんです。
未だに日本のアニメは感情を中心に動かしているので、普通の映画で俳優さんの芝居を見ているような感覚で絵を見られる。その大きな違いがあるんじゃないかと思うんですね。
だから今、世界で子供たちが日本のアニメ好きだというのは、単純に手で描いてるとかそういう技術的な話ではなくて、感情が伝わりやすく、子供が入り込みやすいからなんだと、僕は思います。
もしAIが今後発達して、人間が手で描いているような感情表現もAIが作れるということになれば、それはそれでアリなのかもしれません。
- 手塚治虫先生の言葉として、アニメの本質的なところの一つに「人が時間をかけて描いたものが一瞬で連続して流れるところにアニメのエロティシズムがあるんだ」みたいなことを仰っていたというのを拝見しました。最近AI技術と向き合っていると、ものすごくその言葉を実感してます。こういった点についてもっと詳しくお伺いできるとありがたいのですが。
-
- 手塚さん
-
ちょっと少し専門的な話になのですが、”表現“の情報量の問題になってくるんですが、情報量の中にある「ノイズ」って大事だと思っています。これは外に言葉がないから「ノイズ」って僕らは言ってるんですけど、「揺れ」とか「ブレ」とか、ある種の曖昧さみたいなもので、それ自体が持つ情報として”ある”というのは、現実自体も持っている情報だと思っています。ところがデジタルが特化したものになると、そういう「ノイズ」の部分が全部なくなっちゃうんですよ。そうするとリアリティも含めて受け取れるものが、薄い感じになっちゃうんです。多分それに近いことじゃないかとは思うんですよね。
1枚ずつ人間が関わることによって「ブレ」が生じるし、「ノイズ」も入ってくるんですけど、それが見ていて生命感があり気持ちいいところですね。それをうちの父親なんかは、生きているっていう意味での「エロス」という言葉を使っているんだと思うんですよ。生き物に見えるという意味で、なんです。それはやっぱりそういうスムーズじゃないことが、むしろ情報になっているということなんだと思うんですよ。
これも今後AIってものが、「ノイズ」もちゃんと学習するような形で反映させていくと、意外と差がなくなっていく可能性もありますね。
- 手塚治虫先生作品のあるアニメで、人間のような動きをしていたロボットの少年が、撃たれた後、動きが急にロボット然となるところがあって、その時にゾワッとしたのを
思い出しました。それは感情を見せるということと、今の「ノイズ」みたいなことと、わざとそういう風にするっていうのが作られていたんだと思いました。 -
- 手塚さん
-
日本的な発想なんだと思いますね。情報を減らしているようで、そこにちゃんと「ノイズ」を含めているっていうのが。例えば墨絵とかそういう世界もとてもシンプルじゃないですか。シンプルだけど、その中にちゃんと揺れとかブレとかが入っているからこその情報の厚みになっていると思うんですよね。
それをコンピューターが出す線だけで描いちゃったら、やっぱり味気ない。動きに対してもそういう感じだと思うんですよね。動きをスムーズにしないからこその面白さみたいなことを、やっぱり手塚治虫っていうのは最初狙ってたんで、わざと動かさないっていう。そこから発展していって、いろんな技術が可能になってきた時に、わざとそこでそういう動き少なくすると違和感が出るから、そこを面白く使ってやれっていう、そういうことで使ったんじゃないかと思います。それまでスムーズに見えてたものが急にギクシャクしたりすることの驚きでね。
- 80年代、映像にCG入ってきたのと同じで、AIがツールとして自然に使えるようになってきた時、どこかの負担を軽減したり、便利になったりというようなことは、
お考えになりますでしょうか? -
- 手塚さん
-
これは僕だけじゃなくて、業界が一斉にAIをどう使おうって考えてるんですけど、案外プロとしては使いにくいんですよ。プロに求められるものが今のAIのプログラムだとやりにくくて、これが改善できるものか…ちょっとそこも分かんないですよね。
アニメでお話しするとプロの監督が一番やることは何かっていうと“リテイク”。リテイクを繰り返して映像を洗練させていくってやつなんですよね。
AIって実はリテイクが効かないんですよ。割と一発勝負的な感じで、これをちょっとだけ直したいなみたいな時に、対応できるインターフェースがないんじゃないかなって思うんです。例えば、(生成AIだと)ほとんど今サブスクリプトで文章を打って絵を作っているじゃないですか。じゃあ、その文章をほんのちょっとだけ変えて、それがそのまま絵の中でほんのちょっと変えるということができるのかという。根本からずれる可能性もあって、同じことが繰り返せないと、結構僕らとしては使いにくいですね。
- 80年代、映像にCG入ってきたのと同じで、AIがツールとして自然に使えるようになってきた時、どこかの負担を軽減したり、便利になったりというようなことは、
お考えになりますでしょうか? -
- 手塚さん
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これは僕だけじゃなくて、業界が一斉にAIをどう使おうって考えてるんですけど、案外プロとしては使いにくいんですよ。プロに求められるものが今のAIのプログラムだとやりにくくて、これが改善できるものか…ちょっとそこも分かんないですよね。
アニメでお話しするとプロの監督が一番やることは何かっていうと“リテイク”。リテイクを繰り返して映像を洗練させていくってやつなんですよね。
AIって実はリテイクが効かないんですよ。割と一発勝負的な感じで、これをちょっとだけ直したいなみたいな時に、対応できるインターフェースがないんじゃないかなって思うんです。例えば、(生成AIだと)ほとんど今サブスクリプトで文章を打って絵を作っているじゃないですか。じゃあ、その文章をほんのちょっとだけ変えて、それがそのまま絵の中でほんのちょっと変えるということができるのかという。根本からずれる可能性もあって、同じことが繰り返せないと、結構僕らとしては使いにくいですね。
- 今、アニメーション需要はものすごくあって、凄い数のアニメが作られています。
その現場の負担軽減のため、AIに任せられるところはないかを考えるのが今回のプロジェクトになります。 -
- 手塚さん
- 比較的シンプルで、画が割と記号化されている単純なものに対しては使えるんじゃないかなという気はするんですけど、複雑になればなるほど整合性が取れなくなるんじゃないかなって気がちょっとしますよね。シーン丸ごと全部作ってくれるとかだったら一番いいんでしょうけど。
- 逆にその辺が可能になったら使ってみたいと個人的には思われますか?
-
- 手塚さん
- 修正が利くんだったらいいと思いますけど、それが本当にそのAIというプログラムに対して有効なのかどうか、ちょっとわからないです。AIって、独特の学習をしてしまうので。
- 現場についてある程度知った上でAIを研究してみた結論として、現状はまだ人間の方が圧倒的に優秀というように感じます。
便利にしようと思って使ってみても、余計に人の手がかかってしまったりする部分がまだあります。
それに、世間的にはまだ厳しい視線が注がれる面もある中で、手塚さんのプロジェクトはかなり早い段階からAIを使用するという発表をしたと思うのですが、今何故新しい技術にチャレンジされたのでしょうか? -
- 手塚さん
-
今まで話してたのは画像の話なんです。
ストーリーは可能性がありますね。ストーリーに関してはもう実際現場で使われています。例えば編集者で漫画家と漫画の打ち合わせする時に、先にAIであらすじを作って、
そのAIのあらすじをもとに打ち合わせをするやり方をされている方はいらっしゃるんですよ。言ってみれば昔の漫画の作り方だと、漫画家がいて、編集者がいて、その2者で話し合いながらストーリーを組み立てるというのが結構あったんですけど、そこにもう一つ、AIという第三者が入ってくるというような。
人間だけで考えていると、時間的な制限が出てきちゃって「明日までに10案」とかって言っても難しいところがあるんだけど、AIだったら10案だろうが20案だろうが出せる。そういうところの時間の短縮が圧倒的にでき、量産ができるというところで、いろんな方向性を確認できるという部分は使えてると思うんですね。ただ、アニメとか動画になってくると、ちょっと情報量の処理の仕方とかがちょっと難しいんじゃないかなと。
例えば、この前のプロジェクトで僕らがやったのは”キャラクターの顔を生成する“、これはわりとできるんですよ。具体的な例で言うと、毎回たくさんの敵を倒すみたいな漫画があるとして、たくさんの敵の顔を描くって結構労力が必要で、そのデザインの下書き的なものが出てくれば、その中から「ああ、この顔いける」とかみたいな拾い方ができるし、それで随分短縮になりますからね。
僕らのプロジェクトではっきり言っていたのは、とにかく人間のサポートするんだ、と。
AIが作るわけじゃないよと、作るのは人間なんだよ、というね。
だから、そのサポートをするための道具としては使い勝手があるんじゃないか、というような感じですね。例えば動画でいうと背景の一部とか、静止画だと画面の中から邪魔なものを消すとかね。そういう使い方は普通にアリだと思うんです。
- そうすると現段階だとクリエイティブの部分については、AIは話し相手の一つという感じでは使用ができるけど、基本的にクリエイティブに関わるという点に
おいてはまだ心もとない面はある、という感じでしょうか。 -
- 手塚さん
- そうですね。だから今の技術だとしたら“どう使うか”ってことの方がより重要ですよね。
- 仮に手塚治虫先生がAIという技術をみたら、どうされたと思いますか?
-
- 手塚さん
-
まずアシスタント使わなくても済むので、そこをやらせる。
まずは枠線引き、ベタ塗り、背景の一部とか(笑)アシスタントって手塚治虫が始めた制度なんです。本当は自分で全て描きたいんだけど、あまりにも忙しすぎて、全部自分でやってると雑誌の締め切りに間に合わないと。
だから作品の本質じゃないところ、枠線を引くとか、ベタを塗るみたいなことをやってもらうために人を雇っていたということで、別に弟子を付けたかったわけではないんです。機械的なことで人間でなくてもいい部分には使いたかったんじゃないですかね。
- お話を伺ってみて、アニメとかでも、例えば色を塗るとか、もう決まったものを決まったようにする作業みたいなものはAIに任せられる可能性はあると思いました。
肝の部分はクリエイターの皆さんがやって、AIを道具として使い、どのパートを任せるか、それぞれクリエイターが選ぶ時代になるのかなと。 -
- 手塚さん
- 最終的にはそのクリエイター次第なので。
- AIがというよりは、クリエイターがどういう結果にしたいかを考えるってことが重要という事でしょうか。
-
- 手塚さん
-
そうです。例えばアニメでも何でも効率化に(AIを)使いたいって言うんだったら、それはそれで使えばいいだけの話で。使った結果が余計面倒くさいんだったら、従来のやり方の方が速いとなる事はありますよね。
今(AI技術は)進んでいるんですけど、本質的にAIができること、できないことって実はあるじゃないかというのがあって、そこをまだ誰も見極めてないですよね。
さっき言った「ノイズ」や表現の幅とか深みができるか含め、結局「人間がやった方が良かったね」になるのかそういった問題はありますよね。
- プロの世界ではAIはまだ試行錯誤の段階にあるように思います。
-
- 手塚さん
-
僕らが最初にストーリー生成のプロジェクトを始める時に、僕が一番最初に痛切に感じていたのは何かというと、一般の方がAIを使ったら一定のクオリティのもの活用できるのではないかという点でした。
例えば、どこかの会社でクリエイターじゃない人たちが話し合って、何かパンフレットでも作ろうみたいな時に、そもそも文章を書きなれていない、デザインも知らないとか、色のことも分からないみたいな人が集まって、それで一生懸命誰かのために何か作ったって、どうしても限界あるわけで。
だったらそういうのってAIにやらせればいいじゃないかみたいな感じです。
あと、例えばどこかの役所の人たちが、役所の中で配るパンフレットを作ってみようみたいに思った時にも、AI使う事で一定のクオリティのものを活用できたりすると思うんです。
- そういう目的で役所で作ったものにAIが使われていたと炎上してしまって、内容が取り消しとかになってしまうとしたら、それは何か違う気がします。。
-
- 手塚さん
- もしそうだったら文章は、全部手書きで書けよって話じゃないですか。なんでデジタルで写植するの?みたいな話で。それと同じですよね。その方が伝わりやすい、役にたつものになるというなら使えばいいって話です。
- 今のAIを使う課題として、ちゃんと使いこなせないとオリジナリティを出すのが
難しくなっていると思います。 -
- 手塚さん
- その点について、開発してる人に聞いたんです。
例えば過去に似たものがたまたま生成されちゃった時に、自動的にそれを認識して排除するシステムを作れるんじゃないかって。何かが過去のものに似ていれば、ある種の警告を出すぐらいのシステムができるんじゃないかなという話はしたんです。
それは「多分できるでしょう」という話だったので、そういうフィルターを使っていけば、多分使いやすくなるとは思うんですけど。
- 確かに自分の絵柄が学習・登録されてくるようになれば、その登録された方に似ているっていう警告が出すことも可能になってくるかもしれません。
今は学習されたくないという方もいらっしゃいますが、悪意ある方は使ってしまいますし、それだったら正規登録されて警告が出るようになった方が使いやすい可能性もあります。 -
- 手塚さん
-
例えば、手塚治虫が登場して、人気が爆発した初期の時に、他に出てくる漫画がみんな手塚治虫タッチの漫画だったんですよ。みんなで手塚治虫を読んで学んで、そういうように描いてたんですね。人間がやってるから許されているんだけど、機械がやった瞬間におかしい、ということは変だなと思います。みんな手塚治虫を学習して、漫画を描いているので。
学習して、その通りに描いて、それで覚えて、漫画家になって。
それの何がおかしいか、ということですよね。
- クリエイティブはそもそも学習からでも始まるものかと思います。
-
- 手塚さん
- そうです。学習しかないです。
逆に言うと、何歳になっても学びは必要で。
(作品を)0から生み出すなんて嘘ですから。
- その後、生き残るために自分の個性をそこから生み出していくという
-
- 手塚さん
- そうですね。自分のスタイルを確立する。
- そういう意味では模倣は普通にある事だと思います。
人間も学習したり模倣から入って、「自分だったらこここうしてみようか」みたいになっていきます。
そこの頭の部分が機械だということに対して、今抵抗感がある状況です。
人間も無意識に学習・アウトプットしている事もあったりして、人間もAIもやってることが全く同じ行為をやってるだけのように思った事がありました。 -
- 手塚さん
- 特に表現の世界って難しいですよ。
本当に0からなのか、何かを見て学んで出したのか、もしくは無意識に出しているかということも当然あって、それは分からないですよね。今売れているものでも「過去の何と同じだ」みたいなのも結構普通にありますしね。
- AIだったら出力時に「これは何かに似ている」と警告を出せる可能性がありますが、人間だと知らないで出してしまい、結果問題化してしまう可能性がありますね。
-
- 手塚さん
- そうですね。多分時代とともに変わっているので、今後はこの辺、厳密になりますよね。
- 先程AIをツールとして使えたら手塚治虫先生はアシスタントだったら任せたんじゃないかというお話がありましたが、そういった形でAIをツールとして使う事で
楽になる部分があるという事や、大切なのは作る側の人間がどう考えて使うかということが重要であると、今日のお話を通して感じました。 -
- 手塚さん
-
どこまでの精度を、どう求められているかってことですよね。
意外なことに、僕は今(AIが)一番使いやすいのはアートの領域だろうと思っているんですよ。エンタメじゃなくて。エンタメだからこその厳密さが必要になってくるんで。
アートだったら色々な方向性がありだから、そこはもういくらでも使えるんじゃないかないかと思うんですよ。ネットで見ていると、アマチュアの方が相当精度の高い動画とか作っていますよね。お話も何にもないし、なんじゃこりゃって内容なんだけど、でもその画だけのインパクトでいうと、すごいのがあります。よく作ったな、みたいな。
- AIの議論の中でよく言われる事として、AIが仕事を奪うんじゃないかという意見があります。
そういった意見については、どうお感じになりますでしょうか? -
- 手塚さん
-
僕がいつも分からないのが、具体的に誰の仕事がなくなるのかっていうのがちょっと分からないんですよ。
AIって勝手に動かないので、誰かが使わなきゃいけないです。
使う人がいる以上、その人が仕事している訳なんで。AIを使うという仕事ですよね。
例えば脚本家さんがいて仕事を奪われるではなくて、脚本家さんがAIを使えばいいと思っています。AI使いたくないから仕事を奪われるという発想はおかしいと思います。
ツールとしてAIを使って脚本を書けばいいわけで。逆に仕事を奪われる事例を考えると、アメリカで俳優たちがストライキを起こしたことがありましたが、主にはエキストラの方たちなんですよね。アメリカにはエキストラで生計を立てている人たちがいっぱいいるんです。
その人たちは確実に仕事が減るだろうなって感じで、あとは本当に売れてない俳優とかは、仕事のチャンスが減るわけですよ。現場に行けなくなるし、オーディションが減るわけだから。それは恐れているかもしれないなって感じがしますよね。アニメで言うと、アニメーターは人材不足で、本当にAIの手を借りたいぐらいの感じです。 基本的に表現の世界って3K的に思われていて、若い子がみんなやりたがらない。
奪ってるというよりは、そもそもやりたがらないという(苦笑)ただ、今はAIを使う事は業界的には静観している状況だと思います。すぐ使おうというよりは、みんなちょっと様子見で「おたくどうしてる?」みたいな感じ。
インターフェースが使いにくいっていうのが最大の難点ですね。AIのプロという人たちがいてくれればその人を雇えばいいわけで、そっちの仕事は増えるかもしれないですね。
そこはむしろ競い合いになってね、私の方がうまく扱えますみたいな、こんな映像をちゃんと作れますみたいな人がどんどん現れてくれれば。そうしたらその人たちを使えばいいわけですから。
- AIがアニメに関わる事で、個人が一人で作品を作れる環境が増えて、そこからプロの世界に来る方も増えてくると思います。その辺りはどうお考えでしょうか?
-
- 手塚さん
-
僕は学生で映画を作って、それでプロになったので、同じことだろうなと思うんです。アマチュアでやっていて、それで認められて仕事になるみたいなことはあると思います。
ただ、全部AI任せでやっている人がプロになれるかどうか、ちょっとわからないです。単に絵を作ること以外の、いろいろな仕事上のハードルがあるので。
例えばクライアントあっての仕事の場合に、ちゃんとクライアントの意見を理解して反映できるかとか。
趣味で作るのは好きに作ればいいですが、その人たちがそのままプロになれるかというと技術力以外にいろいろ必要なものがあると思います。
先程話したみたいに“AIのプロ”として、プロデビューするとかはあり得ると思うんですよ。今はそのプロがあまりいないわけだから。そこは今狙い目であるとは思いますけど。
- 最後にAIについて感じてらっしゃる事があればお伺いさせてください。
-
- 手塚さん
- 今AIって本当にわからないから、何を言っていいかもわからない、そうビクビクしている人はいっぱいいますね。でも判ってみると案外「こんなことか」みたいになんでもなくなると、そう思っています。